未来都市にモノ申す
ぎりぎりで訪れることができた「メタボリズムの未来都市」展。
メタボリズムというのは、動植物のように都市も新陳代謝を繰り返しながら成長するとして、大阪万博の時代、黒川さんと菊竹さんが主体となって編集者の川添登がプロデュースした建築・都市論のムーブメント。
絶妙のトークやプレゼンテーションで壮大な都市構想を語る若かりし黒川さんや、何かに憑かれたように緻密な造形によって未来の都市を感じさてくれた菊竹さんらのプロジェクトが一同に紹介されていて、とても楽しい。
ただ、メタボリズムは都市計画の本流だったわけじゃないから、後藤の震災復興や丹下の戦後から現代へとつなぐ系譜に位置づけたのは正直盛り過ぎ。
企画そのものが都市政策とメディアの功罪を暗喩していると捉えることもできるけれど、ややアイロニーが効きすぎてしまう。
同時代のビッグネームがみな新陳代謝で取替え可能のカプセルとして建築を構想していたわけではなくて、磯崎さんや篠原さんにとっては、新陳代謝で都市や建築が更新するなんて発想はまったくなかった。
伊勢の式年遷宮を国家が存続する限りにおいて永続性をもつ日本固有のシステムだとする磯崎さんにとって、都市のメタボリズムはあまりに近視眼的な作為に思えただろう。
エレベータなどパブリック部分を残して住居のユニットだけ交換できるとした中銀カプセルタワーも全て使い捨てたほうがハイパフォーマンスなのはペットボトルの再生と同じだ。
ところで、僕自身建築を始めた頃、大先輩菊竹さんのフリークでした。
都市論は別にして、菊竹さんの東光園のペントハウスや出雲庁の舎の裏側出し家のHPシェルの造形、エキスポタワーの矩形図などは、あらためて見ごたえがありました。
考えるより先に信じて突き進むことで生まれる凄味というのがある。
会期中に逝去された菊竹先生の造形に向かう崇高な精神を垣間見た気がします。
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江戸東京博物館の展示会は結構良いものをやってまして何回か行った事があります。その度、あの建物の異形さが気になって仕方ありません。隈さんの道路際の洋風建物に通じるような・・・結構異形なるものは好きなのですが(笑)・・・磯崎さんの朝日新聞での丹下さん追悼文(?)を思い出しました。
ちなみに加山さんの最新アルバムはホテルパシフィックが描かれています。加山さんがテレビでホテパシを追想しているのを思い出しました。建築家冥利に尽きる話でした。
投稿: TRIPOD | 2012年1月12日 (木) 15時15分
新陳代謝のない日本って、これがほんとのメタボリックシンドロームですね。
菊竹先生は1970年頃までの作品や計画群は感動的です。
最近星野リゾートが再生した鳥取の東光園や解体されてしまいましたが上原謙加山雄三父子のホテルパシフィック、スカルパの比ではない造形美をもつ出雲の庁の舎はじめ信じがたい傑作がたくさんあり、理屈抜きに天才だったと思います。
しかしながら都城市民会館の訴訟等を経てかつての勢いが無くなり、沖縄海洋博アクロポリス以降の建物はかつての菊竹さんとは思えません。
愛知万博や江戸東京博物館などまさに伝菊竹清訓です。
太陽の塔が保存されたのにエキスポタワーは解体されてしまい残念ですよね。
投稿: ninomiya | 2012年1月12日 (木) 14時03分
言葉的な部分は良くわからないのですが、スクラップ&ビルドが今の日本ではないでしょうか・・・新陳代謝は無く有から無、無から有・・・
菊竹さんのエキスポタワーは万博において、ある意味ナンバーワンと言えるくらいの構造物だと思っています。江戸博物館は・・・菊竹さんだったのですね。
投稿: TRIPOD | 2012年1月12日 (木) 11時56分